責任

さく: ねこぽん@つかもと印刷

「――ホントごめんね、瑞希」
「しょうがないわよ。麗奈だって部活のほう、あるんでしょ?」
「うん、そうなんだけどさあ」
「ほらほら、みんな待ってるぞ。行った行った」
「――うん。じゃ、たのんだ」
「はいはい、と」

――麗奈も行っちゃったか。とうとう、あたしひとり。

もうすぐ文化祭。がんばってやることやらないと、楽しい文化祭にならないぞ。でも、みんな帰っちゃったのよね。男子の奮闘で、とりあえずベニヤ板を組み上げるところまではできたんだけど、まだ全然絵が描けてないのよね。
……うーん、どうしよう。

とりあえず、画材はある。ペンキ、ポスカ(っていうの?)、絵筆とブラシ、バケツにいっぱいの水。あれ? ペンキってシンナーとかで溶かすんじゃないのかな? でもいらないって言ってたし……。

とりあえず下地を作らなきゃ。地の色でいいわよね。ええとこのペンキかな……ん、水性? 水で薄めて使えます? あ、なあんだ。そっか、水性なら水でいいんだ。へー。とりあえずふたを開けて(ぱっくん)……っと、わ、飛び散っちゃった。あとで掃除しなきゃ。

とりあえず塗ってみよっと。(べと)む、むむ、全然ペンキが伸びないじゃない。やっぱり、水足さないとダメなのかな? でも、ペンキの缶には水入れられないしなあ……。そうだ、デッキブラシに水をつけて、えい、えいっと(ばしゃばしゃ)。これで全体に広がるでしょ。あったまいーい。

……ふう、ようやく塗れた。ちょっと乾かして、それから絵を描くのよね。なんかこれだけで疲れちゃった。うーん、道は長いわね。

……
…………
………………ふわ。
あ、あら? いつのまにか寝ちゃってた? 看板は……あ、乾いてる。うーん、でもムラがひどいなあ。やっぱりペンキのせいかなあ。こんなところに塗れてないところもあるし……。

あっ、釘出てる。あぶないわね。打っておこう。えーと、金づち、かなづちと……あった。(コンコン)んーダメか。せえの(ごすっ)……あ、ベニヤに穴空いちゃった……。ま、まあ、いいっか。裏から打ち返して埋めておけばバレないでしょ。(ゴンゴン)ええい、音がベニヤに響いてうるさ〜い!

……さて、これにどう絵を描けというのかしら。とりあえず、上の方に字を書いた方がいいわよね。この色でいいかなぁ。うーんと、うーんと、やっぱりこっちかなあ。1年D組、模擬店と。……あれ、もぎてんのもぎってどう書くんだっけ。えーと、木へんに莫だっけ。手へんだったっけ。色変えたほうがいいかなあ。迷うなあ。

とりあえず字は書けた。
……う〜ん。
…………う〜ん。
………………う〜ん。
え、絵が描けないよお。

ええい、何でもいいから描くんだっ。とりあえず、こうで……こうで……こんな感じ? 違う気がする……。

えと、ここをこう直して……あれ、もっと変。どうしよう……。

ええい、思いきってここはこうだっ……。あ。あー。……。しょうがない、下地の色塗っちゃおう。……うっ、どうしても色がすけちゃう。完璧には隠せないんだ。やれやれ。

むぎゅう。
……うーん、うーん。
こ、こうかなあ。えいっ。……ま、まあまあかなっ。

ふう。か、書いても書いても終わらない……。どうしよう。

「高瀬、おまえ、な〜にやってんだ?」
きゃっ! だ、誰? あ、千堂くん。
「な、なにって……。見てれば、わかるでしょ! 立て看板作ってるじゃない!」
「立て看板? これが?」
「……」
「はじめて知った……」
「悪かったわね! あ、あたしだってその……」
そのとき、ひょいっと、あたしが握ってた筆を取られた。
「あ、ちょっとやめなさいってば! これは、あたしがせっかく……」
そして……あたしの絵を直し始めた。
「千堂くん?」
「高瀬って、ヘタくそだなあ。これのどこが看板だ?」

あとがき

はい、例のシーンです。セリフはPC版から取ってるのでちょとアレ。